変愛サイケデリック《1》〜《2》(著:間宮夏生)
▼感想
※1〜2巻合わせての感想です。
普通なようで普通じゃない、そんな高校生たちのちょっと変わった日常物語。
日常……? と思わないまでもないけど、主人公の理子の変人っぷりからすると、あの程度の出来事ならまだまだ“日常”にカテゴライズされそう。
デビュー作「月光」と同じ高校が舞台なので、月光の主人公たちもちらちら登場します。
高校生と言えば、恋も悩みも多いもの。
ただ、その対象がちょっとだけズレているのがこの物語。
よくよく俯瞰してみると、ごくごく一般的な、血のつながりのない男女による恋愛模様が1個も登場しないですな、このシリーズ。
でも、百合っぽくも薔薇っぽくもない、ど直球な青春モノに仕上がっているのがいい感じです。
あざとさがない、というか。
ほらほら、こういう萌え〜なシーンが読みたいんでしょ? みたいな、そういう上から目線の下心がない。
某バチカン奇跡調査官の感想でも書きましたが、いくら読者を喜ばせるためでも、見え透いたサービスシーンだと逆に萎えてしまうんですよねぇ。
その点、このお話は、この感想のためにあらすじを書き移すまで、そういう愛の形ばっかりだってことに気づいてませんでしたもん。
……注意力散漫とか言わないように。
つまり、とっても自然な感じなので、そういうの苦手な人でも大丈夫!ってことで。
ストーリーなら1巻、キャラクター萌えなら2巻……というのが端的な感想です。
だって、理子と悠仁の関係がすごく美味しいんだもん! 自分的に!
特に2巻のちょっと主従っぽい雰囲気にニヤニヤ。
勝気な姫君と彼女を守る騎士のようで。
その上で、この二人を結びつけているのって、姫と騎士――身分による“義務”からじゃない。
ちゃんと“権利”――そうしたいからそうているだけ。
というのがね、もう、ねっ……!!
しかも、1巻の頃の悠仁の尖り具合からのギャップもあって。
サバサバした信頼関係、たまりません。
理子かわいいよ理子。へんかわいい。
ただ、2巻はキャラクターの活躍を追っていくなら大満足なのですが、ストーリーがちょっと強引かな、とも思ったり。
自分の高校が私服校だったからか、女装や男装ってそんなに問題なこと? と実感がわかず……。
確か、女子がスカートを嫌がってズボン登校OKになった高校もどこかにありましたよね。
問題の解決の仕方からすると、性自認は×××だったわけですし、上のズボン着用のお話とどこが違うんだろう、と。
問題の大本は「同性愛」があるはずなのに、結局、「見た目」問題で解決してしまったので、何となくピントがぼけぼけしたまま終わった感がありました。
……まあ、ジェンダーの問題を深く掘り下げると、暗くなりすぎて、ラノベっぽさを殺すことになるだろうし、さじ加減が難しそうだからなぁ(悶々
理子も理子で“恋愛”を“友情”として処理してしまうし(個人的にちょっと残酷だと思った)、1巻の綺麗なラストと比べると、2巻はちょっと不完全燃焼な気もしました。
ただ、人間関係、恋愛模様は、これから続きで大きく動くのかも。
何であれ。
いたいけでナイスバディな女子を全校生徒の前で辱めたパラサイト君が、逆につまはじきに遭うんじゃないかって、お姉さん、そこだけが心配。
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▼1巻あらすじ
へん【変】 ヘン・HEN かわる・かえる
1:普通と違うさま。「−−人」
2:変化すること。
3:彩家亭理子のこと。
「ストレンジサイケデリコ」こと彩家亭理子は、その名の通り千光高校きっての有名な変人であり、変わった愛情を持った者が集まる「変恋部」の部長である。
そんな変人マスターが「愛しいね」と目をつけたのは、春になると死にたがると噂のクール系男子・神宇知悠仁だった。
理子は悠仁の言動が「変愛」に関係しているとにらみ、興味を持つのだが……。
『月光』と同じ世界を舞台に新たな登場人物が紡ぎ出す異色の青春“変愛”物語!
(2012年11冊目)
グ、ア、ム(著:本谷有希子)
▼感想
去年読んだ本なのですが、印象深かったので。
楽しい本じゃないのに、記憶にべっとりこびりつくこの感じ、さすが本谷作品。
夢見がちで生活能力の低い姉と、現実的で意固地な妹。
どことなく(私の大好きな)「腑抜けども、悲しみの愛を見せろ」に似た人物配置なのだけど、こっちは両親ともに健在。そこらへんにごまんといそうな家族が主役。
より正確に言うと、どこにでもいそう――というより、自分の家族に似てるんですよね。
喧嘩っ早い姉と妹。中庸主義な母親に何かズレている父親。
あ、でも、この物語の姉ほど駄目な姉じゃないですよ自分!
た、たぶん……。
しかし、なぜか妹と会うと、マイペース過ぎる! 少しは他人に合わせる努力をしろ!と怒られてばかりなのよねー。ふしぎだなあ(白々
だから、腑抜けども〜よりはのんびり読めるけれども、境遇が似てるからこそ、物語で起きる出来事を腑抜けども〜みたいに対岸の火事として見ることができなくて、しんどいお話でした。
喧嘩ばかりの家族像に、じゃなくて、物語全体に漂う先のない感じ、行き詰まった感じ。
何かもう、THE・今。THE・現代。って感じ。
“幸せになりたい”なんて、ある意味贅沢な欲望も持っているわけではなく、慎ましやかに生きているだけなのに、ずっとこのまま――それどころかじわじわと下降していっているんじゃないか、ってシグナルが絶えず聴こえている感じ。
予感だけはしていて、でもどうしようもできない感じ。
それは姉妹+母がグアムで訪れるチャモロ族の村のしきたり(厳密な身分制度)にも表れていて。
何か身につまされる感がまあ酷い酷い。
グアムなんて非日常に飛び込んですら抜け出せないなんて!
ただ、そんな中で、むちゃくちゃ喧嘩しているのに、互いに軽蔑し合っているのに、姉妹は離れようとしないんですよね。
母親のために仲いいフリしてまで(ちなみに、我が姉妹でもああいう提案をするとしたら絶対に妹である。私では絶対にない。それだから、薄情だと非難されるのよねぇ…)。
仲いいフリする必要がなくなった時にすら、無意識に「一人なんて何が楽しいん!」と言ってしまう姉、とか、ラストシーンで母親と妹にドッキリを仕掛ける姉(つまり家族だけにしか通用しない空間、世界を作り出す試み)、とか、物語は内へ内へと潜り込むような安定を求めて終わります。
階級制度のあった(=その地位のままでいることを是認した)チャモロ族の末裔たちのダンスがすごく華々しく描かれていたりしてね。
どん詰まりの世の中で、それは一つの幸せの形なのだろうと理解はできたけど、読み手としては納得したくない気もしました。
でも、反発したところで、どん詰まりから抜け出せるわけでもない。
うーん、本谷さんめ。相変わらず容赦がないや。
とりあえず、この物語を読んで、うちの家族で海外旅行に行ったとしても喧嘩ばかりになりそうだとシミュレートできたので、計画する時は国内旅行にしようと思った私なのでした。
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▼あらすじ
北陸育ちの姉妹。
長女は大学を出たもののバイト生活を送る、いわゆる「ワーキングプア」。
そんな姉を反面教師にした次女は、高卒で信用金庫に就職。
姉妹は母も交えた女三人でグアム旅行に出かけることになるが、長女の身勝手な行動のせいで、早くも旅は不穏なムードに……。
時代の理不尽、血の繋がった女同士のうっとうしさを、シニカルな筆致で笑い飛ばす、奇妙で痛快なホームドラマ。
(2012年10冊目)
黄金の丘で君と転げまわりたいのだ ――進め マイワイン道!(著:三浦しをん、岡元麻理恵)
▼感想
しをんさんと編集部の面々が、ソムリエ(ソムリエール?)の岡元さんに弟子入りしてワインの楽しみ方をお勉強する全17回の記録。
ワインについて、ではなく、楽しみ方なのがミソ。
ワインは好きだけど、好きなお酒を聞かれて「ワイン!」と答える勇気がない。
だって、好きな銘柄があるわけでもなし、どんなワインだって大抵「おいしいね!」って言えちゃう。あ、でも紙パックのワインは好きじゃないかも。
それに、ワインも好きだけど、ビールも焼酎も日本酒も同じくらい好きだしなぁ。
そういうレベル。それが私。
で。
本書は、そういうレベルな人間に実にピッタリなワイン入門書でございました。
だって、しおんさんたちも似たようなものなんだもん!(超絶失礼
1つの章につき、登場するワインのデータ、しをんさん担当の体験篇(勉強会レビュー)、岡元先生の解説篇(一歩進んだワインエッセイ)の3つで構成されています。
テーマは「香りの違いを楽しもう」「味を表現してみよう」「値段の高いワインほど美味しいのか」などなど。
ワインの銘柄を取り上げて蘊蓄やまつわるエピソードを語ったりするのではなくて、いくつかワインを持ち寄って飲み比べながら(しをんさんたちはお酒が大好きなのでテイスティングした後に吐き出したりしないのだ。すべてぐびぐび美味しくお飲みになられる)、自分が好きなワインの傾向を知るためのお勉強をするのが実に良いのです。
銘柄で紹介してもらっても、わざわざその銘柄を求めてあちこち探し回るほどの根性はない、それこそワイン初心者たるもの。
それよりは、ふらっと立ち寄ったワインショップで何を決め手に選べば失敗しないのかを教えてもらった方が、まだ役立つわけで。
まあ、この本で学べるのは、失敗しないポイントにたどり着くためのヒントまでですけどね。
しをんさんたちもざっくばらんに楽しんでいるし、まあ、のんびり探していけばいいよね、といい具合に肩の力を抜いてもらった感じです。
ワイン生産者の顔写真を並べて誰が好みか主張し合ったりとか、ちょっと分かるなあ(笑)。
女ってそういうのよくやるよね。
あと、巻末特典のコラムが便利だなぁ、とお気に入りです。
ラベルの見方や産地、ブドウの品種について短くまとまっていて、あんちょこ代わりに役立ちそう。
なかなか人に聞くのも勇気がいるし、飲んでる席で聴いてもどうせ忘れてしまうだろうし、こういうデータはとても有り難いです。
1つだけ注文をつけるなら。
写真がついてるともっと良かったのになぁ、と。
だって、ワインの名前って呪文のようで覚えづらいんだもの!
でもでも、大好きなしをんさんが楽しんだワイン、私だって楽しみたい!
ラベルの写真とか載っていたら、ワインショップで「あ、これ、本に出てたやつだ!」って思い出せる可能性が高まるんじゃないか、と思うんですよね。
少なくとも、読了した今、紹介されたワインの中で銘柄をちゃんと覚えているものなんてドンペリくらいしかないぞ!
あと、何より。
岡元先生のお描きになるイラスト、あれだけ会場が湧く逸品、私だって見てみたかった!
独り占めずるい!
……単純に楽しく酔っぱらっていたから、写真に撮るのを忘れていただけかもしれないですが(苦笑)。
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▼カバーより
安いワインでもワイングラスで飲めば、3割増しに!
どんな料理とも相性バツグンの万能ワインって?
好みのブドウの品種を見つけたら、大ハズレはない。
絶対失敗しない、目的別ワイン選び。etc.
「覚えるのが苦手」な超初心者でも大丈夫。
目からウロコのレッスン続々!
作家・三浦しをんが、ワインのスペシャリストに入門!
「情報を捨てよ、楽しくワインを飲もう」のススメ。
(2012年9冊目)
答えが運ばれてくるまでに 〜A Book without Answers〜(著:時雨沢恵一)
▼感想
掌編のような、詩集のような。
相変わらず素敵なイラストに、優しくて時々毒を含む言葉たち。
今巻は若干ブラックな内容が多めかな。
読んで心が洗われるというより、共感したくないのに共感できてしまって悲しい、そんな作品が多かったかと。
「じぶんにはないもの」なんて最高にブラックだし、お金の話や勝ち組負け組の話は身につまされるよう。
砂糖菓子のようにほわほわ甘いイラストに浸っていたいのに、かなりの確率で冷水を引っかけられます。
ただあらすじを見る限り、今回は簡単にいいことを言う(≒答えを渡す)のではなく、読み手に考えさせようって意図がありそうなので、この据わりの悪さは想定内なのかもしれません。
一番好きなのは、上でも挙げた「じぶんにはないもの」。
ちょっとSFっぽい内容で新鮮でした。
あと、今回は格好いい男性イラストが多くて、実に目の保養でした。
10ページの彼なんて!
何なのあのイケメンっぷり!!
…あんな人にあんな最高の口説き文句、言われてみたいものです(苦笑
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▼文庫あらすじ
どんなに考えても、今は答えが出ないことがある。
時間が経たないと、未来にならないと、分からない答えがある。
それまでにーー答えが運ばれてくるまでに、僕達は、何を考えるだろう?
ドキリとする、ウルッとする、元気になる、胸が痛む、納得する、空を見上げたくなる、そんな”心が動く掌編”20篇を収録。
シリーズ累計750万部の「キノの旅」コンビが贈るオールカラー絵本第3段。
答えがいつかあなたに運ばれてきますように……。
(2012年8冊目)
零埼双識の人間試験(著:西尾維新)
▼感想
ようやっと文庫化!
ずっと読みたかったのですが、文庫で買いだしたシリーズは文庫で揃えるのが信条。
心を鬼にして待っていたのであります。
待ってて良かった!
(同様の理由で化物語も我慢してるんですよね。うぐぐっ…)
ひょんなことから“零崎”に目覚めた女子高生・無桐伊織と『二十人目の地獄』にして『自殺志願(マインドレンデル)』・零崎双識の物語。
登場人物は、殺人鬼、殺し屋、呪い屋、あとは死体とほんの少しの正義の味方。
だけ。
徹頭徹尾、普通でない、普通がない。
戯言シリーズを読んだのがかなり前なのもあって、正直、全然理解できた気がしていません(苦笑
伊織ちゃんも普通の子っぽいと思ったら、いきなり殺人鬼に豹変するし、いつの間にかお兄さんに懐いちゃってるし。
お姉さんもう何がなんだか……って感じだったのですが、不覚にも胸キュンするわ、格好良さにシビレるわ、しんみりしちゃうわ、なかなか忙しく楽しませていただきました。
いやあ。双識さんみたいな人、大好きなんですよねえ。
真面目なんだけど、真面目過ぎて変態が入っちゃっているタイプ?
伊織ちゃんにお兄ちゃんぶってキモがられたり、かと思ったら過剰に相思相愛な兄妹を演ってみたり、うむうむ、いいぞもっとやれ!!
――と黄色い悲鳴を上げるにはなかなか切ないラストなのが辛いところですが。
人間シリーズの他のサブタイトルを見ると、双識さんの出番はまだありそうなのは救いなのですが、伊織ちゃんとの新しいやりとりはもうない、のかな。
非っっ常に残念だけど、他の零崎一賊の中にもっと胸キュンさせてくれる方がいることを信じて、続きを待つことにしますよ。
うわーん(涙
…このシリーズって、人外の能力を持った人ばっかり出てくるのに、人の生き死にはシビアなんですよねぇ。
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▼文庫カバーより
さあ、零崎を始めよう。
今語られる零崎一賊の真実。
「人間シリーズ」第一段。
(2012年7冊目)




















